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「イグノーベル賞について考える」
 2002年に「バウリンガル」が受賞したことからにわかにに注目を集めるようになったイグノーベル賞。「逆ノーベル賞」とも言われるこの賞は、世界中のさまざまな分野にわたる研究の中でも群を抜いてエキセントリックな研究に贈られる賞である。
 これをきっかけにして、科学への関心・振興を深めようという表向きの理由とは裏腹に、実際のところはくだらねえ研究の数々だったり。
 ここでは、調べた限りでのおもしろ研究を掲載したい。もちろんこの企画は「完全版」でもなんでもないので、さらに興味を持った方は、各々で調べていただきたい。
 【関連情報(1)】:Ignobel prize公式サイト(英語)
 【関連情報(2)】:『The IgNobel prizes』(Amazon)
 ※(04年6月追記)上の本の翻訳が出たようです。『イグ・ノーベル賞 大真面目で奇妙キテレツな研究に拍手!』


イグノーベル賞(1)
 せっかく公式ページを見つけたので、さっきからどんな研究が受賞したのか読んでたんですが、これ、おもしろすぎます。一部紹介。
 【02年】
 学際研究賞:「へそのゴマ」研究
 化学賞:「表」と「机」の意味を持つtableをかけた「周期表4脚テーブルの開発
 文学賞:文章における不適切なハイライト(強調)が与える影響
 数学賞:象の体表面積の算出

 【01年】
 医学賞:ココナッツの落下による怪我についての研究
 物理学賞:シャワーカーテンが内向きにねじれる原理
 生物学賞:おならが外に放出される前ににおいを遮断するフィルターつきパンツの開発
 文学賞:「アポストロフィー保護協会の設立(cannotではなくcan'tの使用推進など)がもたらした、所有格と複数形の区別への貢献(たとえばdog's/dogs)

 【00年】
 物理学賞:力士から蛙まで浮かばせる磁力の浮力研究土佐の海が浮かんでます
 コンピュータサイエンス賞:猫がパソコンのキーボードの上に座ったときに誤作動させないソフトウェア"Pawsense"の開発
 平和賞:砲撃演習の際、砲弾を使わずに代わりに「バン!」と叫んで代用することを通達した英国海軍

 これはすごい掘り出し物。まだ全部読んでないので、これから楽しんでいきます。おもしろいのがあったらまたここで紹介します。
2003/09/28(日)


イグノーベル賞(2)
 あれからさらに過去の受賞作を読んでみました。今回は97〜99年までの名作をどうぞ。ちなみに今年のイグノーブル賞発表は来月3日。もちろん速報でお知らせします。

【97年】
生物学賞:いろんな味のガムをかんでるときの脳波の違いについて
昆虫学賞:車のフロントガラスに衝突した虫のねばねば物質についての学術的研究
経済学賞:たまごっち(何百万人もの労働力をバーチャルペットに費やさせたことに対して)
平和賞:人間がぎりぎり耐えられるさまざまな拷問についての経験的研究

【98年】
安全工学賞:「プロジェクト・グリズリー」。対熊専用プロテクトスーツの開発。
生物学賞:蛤にプロザック(*多幸剤)を与えたときの幸福感について
平和賞:インドのパジパイ首相とパキスタンのシャリフ首相(核兵器を攻撃的なほどに平和的拡散させたことに対して)
化学賞:水は記憶を持っていて、しかもその情報は電話回線とインターネットを通じて伝わる説
物理学賞:量子力学を人生、自由、経済的幸福追求に応用

*1998年の受賞については下の記事も参照できます。
 『ノーベル賞のパロディ版』(hotwired)

【99年】
社会学賞:博士論文「カナダのドーナツショップについての社会学」
医学賞:患者が選ぶしびんについての研究
環境保護賞:香水のにおいつきビジネススーツの開発
2003/09/30(火)


「プロジェクト・グリズリー」は進化を遂げていた(前編)
 さっき紹介した「対熊用プロテクトスーツ」製作プロジェクトですが、公式サイトを読んでみると、このスーツの開発者・トロイ氏は、その後調子に乗ってさらなる好奇心がはたらいて、このプロジェクトをさらに進化させた『プロジェクト・トロイ』に発展させていたことが判明しました。

 「プロジェクト・トロイ」は現在第6段階まで進んでおり、その最終目標は、トロイ氏によると「騒乱、爆発、火事、弾丸など高速発射物の怪我などから身を守る能力を備えた」スーツの製作とのこと。

 で、このサイトにはいままで作ってきたプロテクトスーツと、このスーツがいかに安全かを身をもって証明した数々の偉業が掲載されています。ブランコ状に吊り下げられた大木がアーマーを襲う(動画)、ライフル銃で狙撃する(動画)、斧で思いっきり殴られる(動画)、超巨大なブルドーザーに轢かれる(動画)など、一見の価値あるものばかりです。

 読めば読むほどおもしろいのですが、書くスペースの問題もあるので(つづく)。次回はそもそもの『プロジェクト・グリズリー』について。
2003/09/30(火)

「プロジェクト・グリズリー」は進化を遂げていた(後編)
 そもそもトロイ氏がこのプロジェクトを始めようとした動機は1984年、19歳のころにさかのぼる。ハイキングに出かけていたときに、熊に襲われたのがきっかけだったらしい。熊に一撃食らったトロイ氏は死を覚悟したのだが、熊は彼に止めを刺さずに帰ってしまった。「殺せたはずなのに、殺さない。つまり私は殺すに値しないと思われたのだ。」

 以来、トロイ氏は熊の生態についての研究を始める。さらに、映画「ロボコップ」を見ていたときに件のスーツを構想。熊が行うであろうさまざまな行動を想定し、なおかつそれらすべてを封じることができる防護スーツの開発に着手する。

 そして7年の歳月と15万ドルを費やし(さらに破産1回+家庭の危機)、防護スーツ「the Ursus Mark VI」を完成。当初はスポーツ用品の組み合わせだった防護スーツも次第に「本格的な」スーツへと変貌を遂げることになった。

 1996年、ついにトロイ氏は「プロジェクト・グリズリー」というカナダのドキュメンタリー番組の一環として、熊との戦いに挑む。だが、このドキュメンタリーは致命的な欠陥を抱えていた。トロイ氏は結局熊に出会えなかったのである。

 1998年、イグノーベル安全工学賞を受賞。ハーバード大学で記念講演を行う。

 2001年、ついに熊とのガチンコ対決。今度はアメリカの飼い熊を相手にしたものだった。だが、ここで意外なことが起こる。実際の熊を目の前にして、トロイ氏がびびってしまった。当初「Mark VI」が想定していた熊のサイズよりも、本物の熊のほうがずっと大きかったため、立ちすくんでしまったのだった。
 結局、熊が近づいてその息がヘルメット越しに臭ってくるほどの距離まで迫った瞬間、熊の飼い主がストップをかけて終了。
 この件をきっかけに、トロイ氏は「Mark VI」をさらに進化させた最強の防護スーツ「Mark VII」の開発に着手することを決める。

 その後まもなく「Mark VII」を完成させ、現在さまざまな実験(前回参照)を繰り返しながら、さらに今度は熊の冬眠を促すスプレーを開発中である。(完)
2003/10/01(水)

速報!03年度イグノーベル賞発表
 発表されました。日本人も受賞したのにテレビのニュース速報に出てません。今回はすべての賞を報告しておきます。なお、急いで訳したので誤訳があるかもしれません、あしからず。

【工学賞】 マーフィーの法則「何かを行うのに2つ以上の方法があり、それらの方法のひとつが破滅的な結果を及ぼすものであるとき、人はその方法を選んでしまう。」を基礎工学の原理と結びつけた功績。
【物理学賞】 羊の引っ張るときに必要な力の分析、そして床の状態による羊を引っ張る時の力の変化
【医学賞】 ロンドンタクシーの運転手の脳がロンドン市民のそれより優れていることを示した研究
【化学賞】 金沢大学広瀬幸雄教授。ハトに魅力を感じさせないブロンズ像の研究(どういうことかはわかりますね?)。
【文学賞】 日常の些細なことに関する80を超える学術研究を収集・編集・出版。(研究の一例:『野球帽のつばを前ではなく後ろにしてかぶる少年の割合』『歩行者が白いスニーカーをはいている割合』『芽キャベツが嫌いな生徒の割合』など。)
【経済学賞】 リヒテンシュタイン国。国まるごとを結婚式、会社の会議など集会場としてに貸し出したことに対して。
【学際研究賞】 「鶏は美人を好む」研究
【平和賞】 インドのラル・ビハル氏の3つの業績・活動に対して。「法的な死を宣言された後も活動的な生活を送る」ために行った業績。「官僚的やものぐさで貪欲な親戚」に対する死後の世界からのキャンペーン活動。「死人協会」の設立。(註・インドでは「法的な」死を宣告されたあと、その生存を報告しても認められないらしい。)
【生物学賞】 初めて科学的にマガモの中に記録されたホモセクシュアル的死体愛好の事実を見出したことに対して。

*2003年の受賞については下の記事も参照されたい。
 『科学に楽しさを:2003年『イグ・ノーベル賞』授賞式』(hotwired)
2003/10/03(金)

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